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からす姫

胸が痛む月夜
涙で言葉は塞がり
星屑が降り止まない
愛しさで空が見えない
顔を上げれば
涙も言葉も零れ落ちそうで

暗闇の中に私はいて
口ずさんだのは歌だけで
伸ばしたい手は
止まらない涙を押さえていた

静かに奏でるメロディーは
私の背に黒い羽根を宿らせ
それが私の名前になった
からすのお姫さま
緋色に輝く瞳のお姫さま

誰にも届かない暗闇で
静かに歌った
幾つもの傷を身体に刻む
からすの羽根に蝕まれる痛み
声が枯れるほど
からす姫は歌った
痛みを忘れるために
涙を拭うために
痛みと涙が求めるもののために

からす姫は歌い続け
痛みと涙の歌は愛する人を見つけた
いつしか愛を奏で始めた
幸せなからす姫

それでも黒い羽根は痛みを与え
愛ゆえの切ない歌しか歌えない
愛されたいからす姫
愛されたいがゆえに
白いレースを纏い
美しい笑顔で全てを偽り
その美しい姿で愛された
幸せなからす姫

白いレースの下には
不幸な黒い羽根
いつしか愛されることにさえ
痛みを覚え始め
泣きながら
苦しみながら
歌を奏でた

羽根は白いレースを脱ぎ捨て
緋色の瞳を輝かせて
泣きながら歌った
痛みを伴う別れの歌
涙を伴う別れの歌
不幸な羽根のからす姫

月夜に光る星屑は
あまりにも輝きが小さすぎて
痛みの傷もからすの羽根も
照らしはしない

言葉は涙に奪われ
歌を奏でるその口は
初めて声にならない
泣き声を奏でていた

月夜に光る星屑が
からす姫を照らさなくても
初めて奏でた泣き声と
月の温かな光は
黒い羽根を照らし始め
美しいからす姫は
初めて暗闇から
知らないまま抜け出していた

からす姫は泣いていた
差し出された誰かの手に
気づかないまま
からす姫は泣いていた
誰かの温もりを感じるまで
気づかないまま

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