アンティークレース
熱を持った指先の
一つ一つに愛撫を重ねて
閉じた目蓋の上に
慈しみの口付けを
淡く染まる
空にない此所だけの色
晴天の光は眩しくて
夕焼けの緋は熱すぎて
空にない此所だけの色に
染まっていく
夜更けの優しい時
染まりながら止まらぬ
心地良い胸の痛み
それは安らぎの感覚
しかしながら
その痛みは
幸福を知る一つの喜び
最後の行為は
目蓋を閉じたまま
唇を合わせた
秘密の口付け
目蓋を閉じたまま
暖かな指先と
口付けをした目蓋を見つめて
静かな優しい時に
包まれながら
夜は静かに眠っていく
胸の痛みに抱かれながら
染まる色は
アンティークレースのように
気高いほどに
淡く儚く甘い仕様に
ぼんやりと浮かんだ
朝日の中で
目蓋がそっと開いたら
微かな光に身を任せて
柔らかな暖かさで
痛みを抱いた身体を染めていて
アンティークレースの
淡い一つの優しい色に
咲き誇る薔薇の色よりも
ずっと淡く幸福に
written by 月ノ音 姫瑠
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